珈琲タイム

モナリザと三太郎

 

友人がそろそろ初句集出そうかなあ

なんてうれしいつぶやき。

中味よりなにより、さっそく装丁の話で盛りあがりました。

 

さて装丁といえば最近こんなユニークな川柳書が登場。

 

 

いえいえ、実はこれ昭和31年に発行された

川上三太郎の著書『川柳 おんな殿下』です。

モナリザに蝶にアンモナイト。

60年前とは思えないポップさですよね。

サイズは新書版くらい。

三太郎が「おんな」を詠んだ自句それぞれに

自らショートコントのような掛け合いを添えて

「一般向きに」川柳をアピールした企画本です。

 

  スチュアデス富士を英語で引合わせ

  百貨店おんなコドモへニョッキニョキ

  娘五人映画見ようか喰べようか

 

終戦から十年余、平和をのびのびと謳歌し始める

「おんな」たちがユーモラスに描かれつつ、

当時ならではの「おじさん目線」には

正直苦笑せざるを得ないところもありますが、それもご愛嬌なのか。

というのもあとがきに三太郎自身が書いています。

「この本一冊を見て川柳とはこういうものか―ーと早合点されては困る」

川柳はもっと幅広く

「ゲンに私の句にしてもまだまだ全く違った趣のものがある」

しかしもしこの本が売れたらそういう句の本も出そうと

本屋さんが乗ってくるにちがいないから

「私のファンよ、この本をたのむ」ですって。

 

それにしても表紙カバーはとても気に入ったらしく、

「従来川柳の表紙図案と言えば

 大抵カエルが自転車に乗っていたり腕相撲しているのである。

 ところが同君(※デザインを手掛けた山崎理)とこの本屋さんはちがった。

 ありがとう」

 

時代の波に乗って、いっちょおもしろいもん作ってやれの意気込みが

装丁にもあらわれていて

モナリザの微笑に、三太郎のニンマリが重なります。

 


新子花ごよみ #29


川の音姉とはおなじ父を持ち  新子




そして姉妹は同じ母も持っているのですが
こんな風に父がクローズアップされると
なにか特別な思いが感じられます。

時実新子の自伝やエッセイには
家族がときに赤裸々といっていいほどの
エピソードで登場し
父もまた破天荒で愛すべき人物として描かれています。
そのいくつかを思い返しながら
川とは故郷の吉井川だろうか、
などとつい句と作者のプロフィールを重ねつつ
やはり句は句としてまず予断なく味わうべし、ですね。

さても「姉とはおなじ父を持ち」とは謎めいています。
同じ父から生まれたのにこれほど違う二人、なのか
同じ父だからこそ似たものどうし、なのか。
そのいずれであれ、心の水面下では
姉といまだに父を取り合っているような緊張感。
川のせせらぎはどこまでも穏やかながら。


(『時実新子全句集』/大巧社)
 

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プロフィール


芳賀博子
「時実新子の川柳大学」元会員。
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より担当。
ゆに代表。
https://uni575.com

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