珈琲タイム

阪急電車

先日、たまたま乗った阪急電車の今津線には
カラフルな袴姿の女子たち。
あ、今日は大学の卒業式なのか、と
しばし華やかなひとときを楽しませてもらいました。
ちょっと遠い瞳をしながら。

ん十年前、私も卒業する一人としてこの電車に乗っていたのでした。
着慣れない振袖など着て。
けどどんなこと考えていたのか、よく思い出せません。
晴れやかにうれしいと同時に
なにかもやもやざわざわに包まれていたような。
はてその正体はなんだったのか、
記憶はさらに行きつ戻りつほろ苦いあの春、この春・・・

ところで政治学者・姜尚中さんの著書『悩む力』の
「『青春』は美しいか」の章にこんな一節があります。

 じつは私はいまでも四季の中で春がいちばん苦手です。
 卒業式や入学式があるように、人間が何かを卒業し、
 次のステップへ進んでいく季節です。
 しかし、みなが先へ進んでいくのを横目に見ながら、
 立ち往生したまま動けない人もいます。
 つまり、春というのはある意味で残酷な季節であるとも言えます。

しかし「青春は挫折があるからいいのだし」、
「年齢を重ねても、どこかで青春の香を忘れたくない」とも。

以前ある柳友から「あなたって春の句が多いね」と言われたことがあります。
それって、今もって春のもやもやざわざわのせい? いやおかげ?
 

新子花ごよみ #14


たんぽぽはたのしや屋根の上で咲く   新子





可憐にして無頼の花、たんぽぽ。
綿毛ふわふわと風に運ばれ、
着地したところがいかなる場所であれ、根をおろす。

でもまさか屋根の上とはねえ、
なんて、当のたんぽぽだって咲いてみて
内心びっくりしているのでは。
けれどそれ以上に、おもしろがろうとしているはず。
まったく我が運命ときたら、と。

たんぽぽに作者が重なり、
「たのしや」の頭上には大らかな春の空が広がります。
ちっとくらいさびしくたって、
ほんと、ここで咲けば空もはろばろ独り占め。

ところでたんぽぽといえば
茎を手折れば白い汁にじむことから
こんな句も詠まれています。

  たっぷりの乳たんぽぽは子を育て

「たっぷり」と「たんぽぽ」の音もほがらかに、
もちろん愛もたっぷりの一句。

今日は時実新子の命日。
雨上がり爽やかな神戸、新子先生の「晴女伝説」を思い出しました。


(『時実新子全句集』/大巧社)
 

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プロフィール


芳賀博子
「時実新子の川柳大学」元会員。
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より担当。
ゆに代表。
https://uni575.com

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