珈琲タイム

新子花ごよみ #78

 

この雪を見ている人の眸を想う   新子

 

 

 

元日早々の能登半島地震、

被災された方々には心よりお見舞い申しあげます。

 

29年前の阪神・淡路大震災の際には

時実新子も神戸で被災。

作家活動の転機ともなりました。

 

ぽっと掲句が浮かびました。

発表されたのは、ずっとさかのぼって

1956年(昭和31)、新子27歳のときです。

雪を見ている眸、

また、その眸を想う眸もまた湖のように澄み、

「想う」深さを伝えます。


新子花ごよみ #77

 

一月や凛凛と星凛と花   新子

 

 

 

凛凛と。

凛と。

美しいR音がまこと明るくリズムを刻んでいます。

 

星と花。

天と地。

一月の澄んだ空気に包まれて

すべてが清々しくあり、

我もまたそうありたしと願っている。

 

そんな一句を口ずさめば、すっと背筋が伸び

句に宿る言霊が、

邪気を払ってくれるような心地もします。


新子花ごよみ #76

 

切符買う未来うっすら見えて来る   新子

 

 

 

本日10日は、成人の日。

新成人のみなさん、おめでとうございます。

 

このコロナ禍や世界情勢の緊迫で

なかなか先行きの読めない時代。

でも、明るい方へ向かっていると信じたいです。

みなさんこそ「未来」。

さあ、1枚の切符を手に。


新子花ごよみ #75

 

逢えるかと紅葉の海に迷い入り   新子

 

 

紅葉の海。

そう、「山」ではなく、海なんですね。

ゆえに、紅葉が樹海のごとく

どこまでも続いていくさまは

なんとも耽美的でおそろしくもあります。

 

逢えるかと。

 

迷い入り、分け入るほどに

恋慕も募っていく。

 

けれど、もしや逢えるはずのない相手だとしたら。

と思うと、映像の赫がいっそう

濃く鮮烈にざわめきはじめます。


新子花ごよみ #74

 

入学の子の背に残る乳臭さ   新子

 

 

 

昨日、入学式へ向かう親子連れを見かけました。

真新しいランドセルを背負った男の子と

グレーのスーツにコサージュをつけたお母さん。

 

目下、コロナ「蔓延防止等重点措置」が

適用されている神戸ですが、

入学式は無事に開催されるんだ、

ほんまよかったね、

って思わず頬がゆるみました。

 

と、つと、男の子と目が合って、

マスク越しに、めいっぱいのニカッを送ったんですが

通りすがりのおばさんからのこのエール、

ちゃんとキャッチしてもらえたかな。

 

さて、掲句。

「いってきます」

「いってらっしゃい」

ピカピカの1年生もさることながら

学校へ送り出す母もまた、

しばらくはドキドキの日々。

この小さな背にも母にも

エールを送りたくなります。


新子花ごよみ #73

 

真っ黒な山が味方の大晦日   新子

 

 

 

日も暮れてなお

慌ただしく立ち働いている大晦日。

真っ黒に威圧する山々は実景であり、

また、煩悩の象徴のようでもあります。

除夜の鐘くらいでは消せない

とてつもない山は

しかし、なにより誰より

頼もしい存在なのかもしれません。

 

2020年の大晦日を重ねると

「真っ黒な山」は巨大な不安にもみえます。

けれどユーモアの力で転ずれば

次へむかうエネルギーともなるでしょう。

 

写真は今日出あった葉牡丹です。

私は、かっと鮮やかなこの紫に元気をもらいました。

歴史に刻まれる今年も、いよいよカウントダウン。

みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。


新子花ごよみ #72

 

何だ何だと大きな月が昇りくる  新子

 

 

 

今週、7日から8日にかけてはスーパームーンが見られました。

大阪の友人から「お月さん、綺麗ですよ」とメールが届き

あ、そうだった!とべランダに出て、しばしお月見。

と、東京の友人からも「いい月だねー」のLINEが。

 

こんな風に、この夜は

月でつながった人たち、多かったみたいですね。

まさに緊急事態宣言が発令されるというタイミングでの

スーパームーン。

この月もまた歴史の記憶となるのでしょうか。

 

掲句は、ご存じ時実新子の代表作のひとつです。

スケール感に加え、

「何だ何だ」のリフレイン、

「大きな」の「おお」の母音で始まる長音も

ゆったりと大らかで

ぜひ音読も楽しんでいただきたい句です。


新子花ごよみ #71

 

また春が来る体内の水の音  新子

 

 

 

神戸は雨の「月の子忌」。

時実新子が世を去って13年が経ちました。

 

さて掲句。

「水の音」にみなさんはどんな水、どんな音を

想像されますか。

たとえば体内ではじまった雪解け。

その水がそそぎこむ川のせせらぎとか、

はたまた。

 

いろんなイメージの誘われる1句。

味わいながら自身の体内の水の音にも

耳を澄ませています。

 


新子花ごよみ #70

 

それぞれの役目に雛の指かたち  新子

 

 

 

新型コロナウイルスが猛威をふるい

一体いつになったら

おさまり、終息に向かうのか。

さらにインフルエンザも流行で

各地の小学校や幼稚園では

学級閉鎖も相次いでいるもよう。

それでもご近所さんの女の子は

幼稚園のお友だちと約束した雛まつりを

とっても楽しみにしている様子です。

その先の卒園式も。

さらにその先の入学式も。

 

はやく穏やかな日常が取り戻せるよう

祈るばかり。

とにかくみなさんも

ウイルス対策万全に、

どうぞご自愛ください。


新子花ごよみ #69

 

地図を見る 坂のある町椿の町  新子

 

 

 

 

さてこの町はどこでしょうね。

第1ヒント、坂のある町。

第2ヒント、椿の町。

そして誰を訪おうとしているのでしょうか。

初めて会う人。

あるいはとても懐かしい人かも。

 

いろんなストーリーを想像しつつ

そのいずれにも明るい日差しを感じるのは

「坂のある町椿の町」が

どこか郷愁を誘う

のどかな良き町に思えるから。

 

ともあれ主人公は

いくつかの電車を乗り継ぎ、

もしかしたら船にも乗って

はるばると会いにゆこうとしています。

地図を広げたときから

すでに旅は始まっていますね。


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プロフィール


芳賀博子
「時実新子の川柳大学」元会員。
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より担当。
ゆに代表。
https://uni575.com

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