珈琲タイム

新子花ごよみ #66

 

いっぽんの箸で秋刀魚を裏返す  新子

 

 

椛 もみじ 紅葉のブログ用無料画像素材|eha0112-049

 

いっぽんの箸で、

ひょいところがすように秋刀魚を裏返す。

そのいっぽんの、そのひょいに、

ちょいとやさぐれた気分が伺えます。

しかしながらこの秋刀魚、てらてらと脂がのって

なんともうまそう。

 

本作は1964年(昭和39)、新子35歳のときの句ですが

さて、前年にこんな句を発表しています。

 

 泣きやんだ母子 秋刀魚を裏返す

 

読みくらべてみると、「いっぽんの箸」の

句としての冴えを、より実感します。

自身の句を容赦なくどんどん塗り替えていくような

当時の書きっぷり、進化の過程もまた

興味深いです。


新子花ごよみ #65

 

かなしみは遠く遠くに桃をむく  新子

 

 

 

うぶ毛ちくちくの柔らかな桃を

手のひらに包み込むようにむく。

そっとやさしく、いたわるように。

甘く香りたち、滴る果実は

かなしみの恋ごころそのもののようです。

 

さて、本作。

実は先週8月3日、吉備路文学館での講演の際に

ご紹介した1句です。

それも虫食いクイズスタイルで(^^)

 

「時実新子の言葉たち」と題した講演、

おかげさまで定員を上回るご参加をいただき

嬉しくありがたいひとときとなりました。

当日はクイズや秘蔵映像を交えながら、

ご参加のみなさんとともに

時実新子の言葉の魅力、魔力について

ぐぐっと深堀りしました。

 

で、虫食いクイズ。

全5問出題したのですが、

よかったらあなたも挑戦してみませんか。

以下の句の中の

漢字1字を入れて新子句を完成させてくださいね。

たとえば,には「桃」。

では以下は?

 

,なしみは遠く遠くにをむく

∋儻の十年を凝視する

シャンと鳴れシャンシャンと鳴れの鈴

喰らうところ見られて離婚なり

ヌ襪やっぱりあの人に 決めた

 

はい。答えは一番下をご覧ください。

以下も全問正解の方には新子検定1級を進呈しましょう♪(^^)

ちなみに会場では3点が最高得点でした。

 

(解答 ‥蹇´∋亜´N つ魁´テ)


新子花ごよみ #64

 

青年の理想だまってハイボール   新子

 

 

 

ハイボール、というと

十年ほど前からのブーム再燃で

いまやすっかり大メジャー。

居酒屋では「とりあえずビール」ならぬ

とりあえずハイボールでカンパーイ!

なんてシーンもおなじみになりましたね。

 

シュワシュワとのどごしよく、

値段も安い庶民派のお酒は

昭和のひと頃にも人気だったそう。

ちなみに本作は昭和31年、新子27歳のときに

発表された句です。

 

理想高くも、ことごとく壁にぶち当たり

思い悩んでいる青年。

理想の先には自身の将来、

さらにはニッポンのあるべき姿も

そびえているのかもしれません。

ゴクリ、ゴクリと黙って飲むハイボール。

そんな青年をいたわるように、励ますように、

そしてちょっとまぶしいまなざしで

見つめている主人公。

それぞれのこれからに想像が広がります。

 


新子花ごよみ #63

 

断念の海の一点から朝日   新子

 

 

 

断念のはるか一点より昇りくる朝日。

再びまっさらの一日が始まろうとしています。

 

本作は、昨日から吉備路文学館でスタートした

時実新子展のポスター、チラシに掲載されている1句。

「川柳大学」130号(2006年10月)に発表された

新子77歳のときの作品です。

 


新子花ごよみ #62

 

母だから泣かない母だから泣く日  新子

 

 

 

もうすぐ母の日。

ということで今回はこの1句を選びました。

もう余計な解説は要りませんね。

時実新子の代表句のひとつであり、

新子句集シリーズの

『母 走りつづける 列車のように』にも

収載されています。句集には他にも

 

 生んだ覚えのある子が敵になってゆく

 旅に出て思う長女のランドセル

 母から母へ母から母へ軋む音

 

ところで句集のサブタイトル、気になりませんか?

「走りつづける 列車のように」とは、って。

これについて新子自身が前書きにこう書いています。

 

 母と子、特に母と娘は列車なのですね。

 快走の日もあるけれど、

 トンネル、坂、鉄橋、横風、向かい風。

 駅では別れの手が千切れたりもします。 

 連結器の軋み音は母と娘を傷つけ痛ませます。

 それでも繋がないと列車は走れないし、 

 大体、切ることができないのですから、

 「いのち号」は今日も、泣いて笑って、

 歓びの笛を吹くのです。


新子花ごよみ #61

 

平和うれしい恋に泣いたし子も生んだし  新子

 

 

 

近所の桜です。

歩いていたら、紋白蝶のつがいと遭遇しました。

今年初めてみる蝶に、思わず頬がゆるみます。

 

 

新元号が発表になり

平成もいよいよカウントダウン。

改めて掲句をかみしめています。

続く世の平和を祈りつつ。

 


新子花ごよみ #60

 

日は春にニュースはスポーツに移る  新子

 

 

窓の日差しがやわらかくなった。

ニュースは特段大きな事件なくスポーツへと移り、

野球のキャンプ情報など流している。

あ、春だなあと。

そんなおだやかな1句に、ほっと息をつきます。

 

今日は時実新子の命日。

仏教でいえば十三回忌になります。

コーヒーをこよなく愛した先生を偲びながら

今、ちょっとおいしいコーヒーを淹れました。

みなさんも一緒にいかがですか。

 

(「時実新子の川柳大学」123号 2006年3月)


新子花ごよみ #59

 

恋成就バンザイをさせるキューピー  新子

 

 

『キューピーにバンザイさせる。笑わないでね、

 とにかく今はバンザイなの。「手を上げて、

 手を上げないで足上げない」なんて、

 キューピーをいじめてうれしさ発散させる。」

 

と新子自身が添えた一文も楽しい

句集「恋 こんなにもゆれるぶらんこ」。

テーマ別に編まれた句集シリーズ、

Shinko's Heartful Selection の中の1冊です。

さてバレンタインも目前。

チョコを選ぶ前に開いてみるのはいかがでしょう。

恋をテーマにした選りすぐりの100句が

あなたの恋をドラマチックに応援してくれるかも。


新子花ごよみ #58

 

好きという茎まっすぐに伸びすぎる  新子

 

 

 

いいじゃないですか、ね。

まっすぐすくすくとまいりましょう。

好きの力、思うにまかせて存分に。

それでなくたって

今年は干支もいのしし、

猪突猛進まっしぐらの年ですもん、

なんてね。

 

さて、写真はわが家のイノシシくんです。

母の手作りでして、

今風に言うところの「おかんアート」ゆえか

どこかのほほんとしております。

が、走るときには走るぜい、らしいです。

 

管理人も、走るときには走るぜい、

と気合いを入れまして、初更新。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。


新子花ごよみ #57

 

こひびとよ菊の枕に訪ね来よ  新子

 

 

 

菊枕。

辞書の解説では

「干した菊の花びらを入れて作った枕。

 香りがよく、頭痛や目の病いなどに効能があるという。」

また

「邪気を払い、

 不老長寿を得ることが出来るとして珍重された」とも。

使ったことはないのですが、興味しんしん。

そして俳人・杉田久女のこんな句がよぎります。

 

 白妙の菊の枕をぬひ上げし  久女

 

女性俳句の先駆けであった久女が

師の高浜虚子の長寿を願って菊枕を贈った

世に知られるエピソード。

しかし後に久女は一方的に破門されてしまう。

 

そんな悲劇的な香りも漂わせる

晩秋の季語「菊枕」をモチーフに

新子は恋の川柳を詠みました。

 

さて「菊の枕に訪ね来よ」

とは、みなが寝静まったら逢いに来てほしい、なのか

夢の中への誘いなのか。

あるいはその両方でしょうか。

 

菊の芳香、「こひびと」の旧仮名遣いが

クラシックに官能的な

恋の一篇を思い描かせます。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)

 


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プロフィール


芳賀博子
元「時実新子の月刊川柳大学」会員
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より
担当
http://haga575.com

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