珈琲タイム

新子花ごよみ #58

 

信長も光秀もいて師走かな  新子

 

 

 

 

え、どこどこ。

あ、いたいた。

 

ほらそこの忘年会。

あけすけに野望を語りご満悦の殿がいて、

そんな殿に粛々と酒を注ぐ側近の一人が、きっと。

 

いや、それとも。

クリスマスの雑踏を急ぐあの二人かもしれません。

どちらも一見フツーのビジネスマンですが、

コートの下からそれぞれの思惑が

ちらちらのぞいている気がして。

 

なんて、想像をふくらませながら

 

師走を歩いてみるのもまた愉快。

目を凝らせば秀吉や家康も

見つけられるかもしれません。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #57

 

こひびとよ菊の枕に訪ね来よ  新子

 

 

 

菊枕。

辞書の解説では

「干した菊の花びらを入れて作った枕。

 香りがよく、頭痛や目の病いなどに効能があるという。」

また

「邪気を払い、

 不老長寿を得ることが出来るとして珍重された」とも。

使ったことはないのですが、興味しんしん。

そして俳人・杉田久女のこんな句がよぎります。

 

 白妙の菊の枕をぬひ上げし  久女

 

女性俳句の先駆けであった久女が

師の高浜虚子の長寿を願って菊枕を贈った

世に知られるエピソード。

しかし後に久女は一方的に破門されてしまう。

 

そんな悲劇的な香りも漂わせる

晩秋の季語「菊枕」をモチーフに

新子は恋の川柳を詠みました。

 

さて「菊の枕に訪ね来よ」

とは、みなが寝静まったら逢いに来てほしい、なのか

夢の中への誘いなのか。

あるいはその両方でしょうか。

 

菊の芳香、「こひびと」の旧仮名遣いが

クラシックに官能的な

恋の一篇を思い描かせます。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)

 


新子花ごよみ #56

 

恋の体操も終わりの深呼吸  新子

 

 

 

本日10月10日は、かつて「体育の日」で祝日でした。

2000年からは第2月曜に移動しましたが

昭和人?としてはいまだ

旧体育の日としてのイメージが懐かしく残っています。

 

というわけで、今回は体操の一句をチョイスしました。

といっても、これもまた恋の句なんですけれどね。

 

恋も終わりに近づいて

まるでラジオ体操の最後のように

ふうっと深呼吸して息を整えて、

そしてさようなら。

 

ですが、ここへ落ち着くまでには

やはりラジオ体操の過程のごとく

激しく心拍数をあげる山場があったのでは、

などとも想像させる句です。

 

恋の終わりが詠まれつつ

どこかユーモラスで、

そして作者とともに

こちらもふうっと深呼吸ひとつ。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #55

 

風の駅まもなく電車が入ります  新子

 

 

 

大型台風に続き、北海道での地震。

被災された皆様に心よりお見舞い申しあげます。

 

今月は時実新子のお気に入りの句をお届けします。

いや、お気に入りかどうか、

直接ご本人に確かめたことはないのですが

雑誌やテレビ出演での自作紹介で

折にふれ挙げられていた句です。

 

いわゆる代表作として知られるような

情念ほとばしる句と比べると

ごくさりげなくてリズムも中八。

それでも、なにか深い思い入れあり

終生大切にされていた作品ではないかと思います。

 

句にいろんな景が浮かびます。

まもなく入る電車に乗るのは

作者か、あるいは。

 

季節の変わり目に、ふと口ずさみたくなる一句。

風の駅に吹くその風の趣も

味わうたびに異なるのですが、

今はやわらかに胸に沁み入り、

はやく穏やかな秋に落ち着くことを

祈るばかりです。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #54

 

夕涼み本を読む娘が一人居て  新子

 

 

 

 

記録的猛暑が続きます。

例年なら節電や省エネを訴えるメディアも

今年はこぞって

「躊躇なくエアコンをつけてください」

を連呼しています。

 

それでも、はや立秋を過ぎ、

ほんの少うし日も短くなってきました。

夕涼みにほっと息つける日が待たれますね。

 

さて掲句。

どこか懐かしい景です。

娘は一体なにを読んでいるのかしらん。

なんて娘をみやるまなざしもやわらかで

句からはふわっと打ち水のにおい。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #53


暑き日は暑き思いに膝を抱く  新子

 

 

 

 

この度の豪雨により被災された皆様に

心よりお見舞い申しあげます。


過日の大阪北部地震以来

大きな自然災害や異変が相次ぎ

各地の誰それの安否が気がかりです。

 

今後の猛暑の影響も懸念される中、

皆様どうぞ、くれぐれも、くれぐれも。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #52


G線上のアリアとすごすながい梅雨  新子

 

 

 

 

G線上のアリア。

バッハのゆっくりと厳かな調べに

雨音が重なり

作者の胸の底まで濡らしているよう。

 

ながながと、深く深く

なにかをあきらめさせるように

癒すように。

 

梅雨どきのもの思い。

あなたのBGMはさて

どんな曲でしょう。

 

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #51


季節の恋人で苺は愛される  新子

 

 

 

スーパーや青果店の店頭は苺、苺。

まさに旬ですね。

ですがクリスマスシーズンもずらっと並ぶので

苺の旬は冬、と思っている人も少なくないそう。

 

個人的には幼稚園のときに行った苺狩りが苺の原体験。

だから苺といえば五月で、

もうン十年も前で記憶もおぼろながら、

手で摘んだ感触や

初夏の光や土っぽいにおいがフラッシュバックします。

 

さて掲句の苺もとびきりのみずみずしさ。

主人公は季節の恋人とちょっとしたアバンチュールなど

楽しんでいるのでしょうか。

甘く酸っぱく、あくまでも爽やかに。

そしてさりげなくスリリングに。

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #50


晶子の涙わたしの涙何変わろ   新子

 

 

 

今年は与謝野晶子の生誕140年。

ただいま神奈川近代文学館では

特別展「生誕140年 与謝野晶子展 〜こよひ逢う人みなうつくしき」を

開催中です。

http://www.kanabun.or.jp/

 

さて晶子といえば新子。

さかのぼって約半世紀前、

句集『新子』を手にした国文学者・吉田精一はこう評しました。

 

 ひょっとすると、時実新子の句集『新子』は、

 与謝野晶子の『乱れ髪』のようなもった意義を

 川柳史の上に占めるかもしれない。

 

その後『有夫恋』が異例のベストセラーになり

大胆に情念を詠む作風から

「川柳界の与謝野晶子」と称されました。

没後10年以上を経てなお

メディアが新子を紹介する際にはこのフレーズが用いられ

今さらながらに新子登場時のインパクト、

また与謝野晶子のゆるぎない存在感を思います。

 

実際、新子自身も晶子の作品や生き方に

共鳴していたのでしょう。

他にもこんな作品を詠んでいます。

 

 晶子曼荼羅子らの寝顔に責められる

 愛ありて晶子に百首屏風あり

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


新子花ごよみ #49


桜しんと 男と女あるばかり   新子

 

 

 

今日は時実新子の命日。

没後11年になります。

 

ふとご夫君、曽我六郎さんの

こんなつぶやきを思い出しました。

「新子は言うんだ。

 結局のところ、人生は男と女だって」

 

川柳大学の編集長でもあった曽我氏。

まさに博覧強記で座談の名手。

編集室のコーヒータイムでも

大いに楽しませてくださいましたが

ある日スタッフに

「あんたたちに一番大切なものって何?」

え?

「ぼくは・・自由、だね」

 

人生は男と女だとする妻。

自由こそ一番という夫。

愛と自由は矛盾だらけの不即不離か、なんて。

 

写真は今週、大阪造幣局で撮った一枚です。

通り抜けはまだまだ先ですが

一番桜はもう咲いていました。

 

(『時実新子全句集』/大巧社)


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プロフィール


芳賀博子
元「時実新子の月刊川柳大学」会員
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より
担当
http://haga575.com

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