珈琲タイム

川柳新子座

今月、この「珈琲タイム」で

歴代の川柳新子座大賞・準賞を

シリーズでご紹介したところ、

さまざまな反響をいただきました。

「懐かしい!」

「ずらっと圧巻」

「はじめて知った。投句したかった」

 

新子は「私の求める川柳」について

たとえば新子座92年版『遊びせんとや』のまえがきの中で

こんな風に語っています。

 

「〔川柳新子座〕には週題が出される。

これは最初から私の提案であった。

無題であるとき、川柳はともすれば時事に流れる。

時事川柳やサラリーマン川柳には、

それなりの魅力があり意義もある。

しかし、私の求める川柳はもっと深いところにあった。

人生、いのち、こころ。

つきつめて個。

個から発せられる悲喜こもごものドラマを

私は見たかった。

川柳は『もう一人の自分が自分を見る』という

自己客観の文芸である。

社会性を云々する向きもあるが、

自己啓発のできない人に

どうしていきなり社会啓発ができようか。

もしできたとしても

それは単なる『あげつらい』か

皮相的な『からかい』でしかないだろう。

しっかりと個に生きて、

その個が座となり衆となったとき、

初めて社会が見えてくる。」


川柳新子座

2004年 第16回

 

大賞  月の砂漠をらくだに揺られ自己破産    山村正三

準賞  鍵一つ増えてあなたの駅にいる      佐藤 節

    転職のように再婚通知来る        ふくだみのる

    あじさいや母乳たっぷりもらう猫     高田和代 

    梟が鳴いてこの世は魅力的        石田 都

    まるくまるくいつかなくなるまでまるく  佐渡真紀子

 

「週刊朝日」2004年12月31日号に発表された

新子座大賞・準賞の受賞作です。

これをもって「川柳新子座」は多くのファンに惜しまれつつ、

16年の歴史に幕をおろしました。


川柳新子座

2001年 第13回

 

大賞  私の深いところで飛ぶカモメ     川瀬晶子

準賞  雨粒に負けそう別れて三週目     津 さと子

    風船が西へ流れてゆく安堵      池末亮輔

    たまさかに金魚も遊ぶ鰯雲      石井陶子 

    自転車で傾きながら少年期      中西南子

    幸福よ屋根の上から降りてこい    土屋公二

 

2002年 第14回

 

大賞  忘れゆくことができます春の白    田村ひろ子

準賞  蕾から葉桜までの定期券       溝江 豪

    過去は過去五月の樹下で短髪で    大西俊和

    肉体は暗いもんだね窓あける     加島 修 

    そりゃあもういろんな林檎むいた指  大塚啓子

    夜はよろこんで窓から出ていった   永政二

 

2003年 第15回

 

大賞  稲光 人格Bが甦る         小林康浩

準賞  背泳ぎの指に濡れてる天の川     野村辰秋

    逢いたいとイカの臭いのする電話   梅田 旬

    春落ち葉浴びてなんだかいい女    宮崎稔子 

    カラスよりさびしい足を擦り合わす  福井陽雪

    私の星は軍靴の音がする       深澤 馨


川柳新子座

1998年 第10回

 

大賞  黒髪を風に広げる逢う朝は       平野ふさ子

準賞  風邪ひきのからだに満ちてくる慕情   田村千可子

    さくらさくら書いて置かねばならぬこと 大橋貴子

    夏深し納屋に転がる母の下駄      平井美智子  

    はやる胸菜の冷たさに救われる     大平萩え

    悲しみも葡萄の玉を呑むように     岩下静香

 

1999年 第11回

 

大賞  プライドをはがすレタスの葉のように  後藤育弘

準賞  死刑執行 私の滝の音静か       鈴鹿幸子

    四月だかなんだか弾け飛ぶボタン    芳賀博子

    乾いたら別人になる濡れタオル     谷平こころ  

    魔ってなあにさあてなんだろ栗おたべ  小早川さだ

    愛は丸三角四角無限大         並木赤平

 

2000年 第12回

 

大賞  罌粟ひらく言葉のいらぬ空間へ     七尾美千子

準賞  足早に過ぎゆくもののある夜明け    近藤ゆかり

    帰ってしまった帰っていいと言ったけど 伊藤こうか

    笹饅頭ちょっと涼しい恋である     川田由紀子 

    ジャムパンのなかで片寄っている思慕  小林康浩

    蛍光灯消せば果実の熟れる音      橘 訓子


川柳新子座

1995年 第7回

 

大賞  好きという大きな毬を渡される    宮本草子

準賞  猫の仇討ち金目銀目を従えて     峯 裕見子

    砂漠まで蹴った石から孵る雛     葦 妙子

    朝顔や妻に接吻してしまう      和田あきを  

    優しさも微量であればきらきらと   北村幸子

    突然の月に裸を舐められる      石垣 健

 

1996年 第8回

 

大賞  黄ばむ程この世に生きて忘られて     各務雅憲

準賞  向う岸へ予想もしない人が飛ぶ    宮本美致代

    眉消して喜怒哀楽に遠ざかる     土佐 和

    蛤にバカバカバカと𠮟られる     泉 組子  

    名画座の雨は返せぬ傘に降る     松岡瑞枝

    並木道いつか一人になっていた    平沢テルコ

 

1997年 第9回

 

大賞  スカートが開いて着地 この世とは  横澤あや子

準賞  こんにゃくを切る憎しみが定まらぬ  松本智恵子

    戻れないところで匂う夜の百合    米内吉信

    丸木橋渡れますとも今逝きます    石垣サツ

    ポキポキポキ夢をかじっている兎   齊藤五月

    夢を追う鰯は口を真四角に      夕 凪子


川柳新子座

1992年 第4回

 

大賞  しっかりと両手で持って読む手紙  井上和枝

準賞  霊柩車生者も浴びる花吹雪     中野恵空

    唇の荒野で麦の穂がゆれる     板野美子

    ちびてゆく石鹸ですかこの恋は   高島也知子  

    ゆえもなく熱い耳して夕暮れる   大西 柊

    洗濯機止まる必ずくる終わり    嶋守美香

 

1993年 第5回

 

大賞  悪という黒いあんこの舌ざわり   札本弘一

準賞  真向いにふわりと座る怖い人    岸本惠美子

    わが憎悪ついに話さず母を焼く   田村賢一

    追いかける恋の愉しさキムチ鍋   情野千里

    空に雲地にかまきりの自尊心    北川弘子

    月を映して椀は一夜の華となる   山佳子

 

1994年 第6回

 

大賞  慈悲無用蟻の骸は蟻が曳く     倉富洋子

準賞  不確かな包みを懐き母になる    岡田千加子

    一面の雪無罪とは限らない     高瀬霜石

    土踏まずわがげんげ田に帰りませ  徳住八千代

    非は吾にあり塩豆の塩辛さ     小池楽人

    ほがらかで煮物上手で嫌な人    鈴木眞紀子


川柳新子座

川柳新子座大賞・準賞の受賞句を

第1回から順に振り返っていきます。

 

1989年 第1回

 

大賞  信号の黄に突っ込んで生きている  天根夢草

準賞  黒猫の恋遂げてなほ無愛想     新井雪子

    うれしくて乳房二つが毬になる   中村みや

    恋人にボタンはずしてもらう初夏  松田京美

    一升酒を呑んでも狂えない時計   大木晤郎

    掌に傷あり月に触れたるか     大川博幸

 

1990年 第2回

 

大賞  指切りのかたちのままの灰がある  西秋忠兵衛

準賞  菜の花のまん中 心配事がある   来住タカ子

    虚言癖パセリの種をどっと蒔く   高橋康夫

    詰襟の少年 首をもてあます    矢島玖美子

    百合三本包んで下さい急ぎます   坂井 隆

    力無き蠅を手首に休ませる     緒久葉子

 

1991年 第3回

 

大賞  あじさいや夫婦も同じ顔になり   長島正弘

準賞  夜桜にともだちのまま帰される   前川 栄

    桃よりも傷つきやすくなっている  高橋かづき

    コスモスに男の意地を笑われる   早川渓声

    芒野へ疲れた耳を置きに行く    楢崎進弘

    ざわざわと死者も生者も十二月   菊地 健


川柳新子座

 

 

先ごろ刊行された、とあるアンソロジーの中に

「川柳新子座」の名を発見しました!

 

その新刊とは『精鋭作家川柳選集 中国・四国・九州編』(新葉館出版)。

鳥取在住の平尾正人さんもご登場で、

「遥か昔、アサヒグラフという雑誌の中に

 川柳新子座というコーナーを見つけて投句を開始したのが

 川柳との付き合いはじめだった」

と書かれています。

 

こんな風に、現在ご活躍中の川柳人には

「川柳新子座」を読んで、川柳を始めたとおっしゃる方が

数多いらっしゃるのですが、

さて「川柳新子座」とは一体・・?

 

はい。ということで振り返ってみますと、

「川柳新子座」は1989年、アサヒグラフのカラー見開き2ページに誕生した

時実新子選による川柳投稿欄。

といっても、従来の川柳投稿欄とは

まったく違う大胆なスタイルで、破格のスケールで、

毎週、選り抜きの10句が新子の名鑑賞とともに発表されました。

 

さらに年間の入選句から

大賞1句、準賞5句が選ばれるという

ダブルのお楽しみがあり、

それも選考委員は新子座長、歴代の編集長、

そして田辺聖子さん(後に道浦母都子さん)!

 

投句ハガキは次第に増え、

毎月2000枚にもなったといいます。

 

では、どんな作品が年間賞に選ばれていたのでしょう。

この続きは次回に♪


最新の川柳

 

 

先般、俳人・坪内稔典氏の人気ブログ『坪内稔典の「窓と窓」』で

「最新の川柳」と題し、

川柳作家6人の近詠がシリーズで紹介されました。

 

阿川マサコさん、小林康浩さん

重森恒雄さん、西田雅子さん、

濱山哲也さん、山崎夫美子さん

 

所属結社や活動はそれぞれですが

いずれ劣らぬ個性派、実力派。

ちなみに阿川さん、小林さん、重森さんは

元「川柳大学」会員でもいらっしゃいます。

 

はたして俳人が読み解く川柳。

川柳とは、俳句とは、といった観点からも

とても興味深く論じられているので、

みなさんもぜひご覧ください。

管理人の作品も番外編で登場しています。

ブログの記事はこちらです。

 

最新の川柳(1)

最新の川柳(2)

最新の川柳(3)

今日の一句_蝉と便り

揺れる川柳

最新の川柳(4)

今日の一句_ワンピースと晩夏

 

各地厳しい残暑が続いています。

みなさま、くれぐれもお体大切に。

 


風の会

 

7月20日、島根県の川柳家・金築雨学さんが

逝去されました。享年79。

詩性と批判精神を湛えた独自の作風で

全国にファン多き作家でした。

私もその一人です。

 

雨学さんは、島根県川柳界の要職を歴任される一方

小学校へ出向き、子どもたちに川柳を教える活動なども

しておられました。

 

時実新子が1975年(昭和50)に創刊した「川柳展望」に翌年から参加し、

1978年には展望叢書より第一句集『金築雨学川柳集 夕なぎ』を上梓。

 

 今までの迷いが嘘のような空

 ふるさとの潮の流れに身を任す

 海峡をのぞく仏の前垂れよ

 吊り橋がうなる一日子を捜す

 山陰の風カタカタと人形の首

 

3年後には川柳研究会「風の会」を創立。

山陰の気鋭たちが切磋琢磨するこの会を時実新子も応援し、

合同句集『風』が発行(1985年)される折には

序句「風七句」を寄せています。

 

「風七句」 時実新子  

 

 風枕みじかき夢の果てもなや

 風と人のほかに何ある恋やせん

 突風の樽ころがしはあの世まで

 蟷螂の長考待てず風の旅

 罪千夜一夜 風鈴鳴り通す

 秋風に隠れ棲むとは申さじよ

 風の子は終生父の名を問わず

 

序文は柴田午朗さん。

『辺境ともいえる山陰に、

 この「風」という一点を印した功績は大きいと思う。』

 

「風の会」は1997年に閉会されましたが

山陰で、さらに山陰発で、

まさにさまざまな風をおこしたのでしょう。

 

ところで金築雨学さんと、一度だけお目にかかる機会を得ました。

3年前、出雲で開催された川柳大会でのこと。

懇親会では時実新子や展望の懐かしいエピソードを

いろいろ語ってくださいました。

終始ほがらかで、そのときのあたたかい笑顔を思い浮かべながら

合掌です。


| 1/16PAGES | >>

プロフィール


芳賀博子
元「時実新子の月刊川柳大学」会員
初代管理人・望月こりんさんより引き継ぎ、2014年2月より
担当
http://haga575.com

カレンダー

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   
<< September 2020 >>

カテゴリー

最近の記事

過去の記事

コメント

リンク集

サイト内検索

 

モバイルサイト

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM

recommend